『埼玉の救急医療』に対する市民からの提言

市民の医療ネットワークさいたま
埼玉の救急医療大探検ボランティア


 ’02年11月1日埼玉県庁内にある医療整備課に、「医療ネットワークさいたま」のメンバー7名がお伺いして、救急医療に対する市民からの提言を手渡し致しました。

 救急医療機関から集めたアンケートともとに市民の立場からまとめた提言を以下に掲載致します。



1.『市民ボランティアによる埼玉の救急医療大探検』の取り組み

 私たち『市民の医療ネットワーク埼玉』(会員数288名)は、1992年1月の発足以来10年間、市民が地域の医療情報を共有することと、市民・患者と医師のコミュニケーションをはかり相互理解を促進することを2本柱にして、地道に運動を積み上げてきました。

 その柱のひとつである地域の医療情報共有のための「より良い地域医療を実現するためのアンケート」は、これまでに延べ8594名分を集約しましたが、そのなかで、夜間・休日医療、救急医療に対する不安や不満が数多く寄せられてきました。

 そこで、私たちの身近な埼玉県の夜間・休日医療、救急医療の実際の姿がどうなっているのかを、市民自らの手で調べてみようということになりました。

 2001年1月、市民の医療ネットワークの会員をはじめ友誼関係にある市民グループへの呼びかけ、そして新聞での広報などを通じて、51人の市民ボランティアが集まり、『埼玉の救急医療大探検』の取り組みがはじまりました。

 その第1は「アンケートづくり」です。参加メンバーで、自分たちが「何を知りたいのか」を率直に話し合う中で、「休日・夜間に対処できる疾患」「急患受入実績」「現場で困っていること」など約20項目の「埼玉の救急医療に関するアンケート」を作成しました。

 そして4月から13のグループに分かれ、『埼玉の救急医療大探検』を開始し、県内239の救急告示医療機関のうち150を訪問(残り89は郵送と電話で要請)し、「埼玉の救急医療に関するアンケート」への協力を依頼しました。

 市民によるこうした調査が初めてだったこともあり、病院側にも戸惑いや警戒感があったことも事実で、なかなかアンケートに答えてくれる病院が増えませんでした。

 市民ボランティアのメンバーは、そうした医療機関の対応にもひるむことなく何度も足を運んだり、電話をかけ続ける中で、徐々に回答病院の数も増え、ほぼ6ヶ月がかりで113の医療機関からアンケートをもらうことが出来ました。

 私たち市民ボランティア・メンバーは、この大探検で初めて幾つかの病院を見比べることができ、病院の様子やアンケート調査への対応の違いなどを、肌で実感しました。また、そうした取り組みのなかで、救急医療の現状に危機感や問題意識を強く持たれている病院長や事務長と話し合う機会もあり、埼玉の救急医療の実際についての理解も大きくすすみました。

2.『医療サミット埼玉2002』の開催

 この大探検の取り組みを踏まえて、2002年1月20日には、消防(中村隆雄越谷市消防職員協議会副会長)、第2次救急医療機関(日下部伸三指扇病院副院長)、第3次救急医療機関(今明秀川口市立医療センター救命救急センター副部長)、医師会(山崎博大宮医師会副会長)代表をパネリストに迎え、市民や医療関係者170名が参加して『医療サミット埼玉2002』を開催し、埼玉の救急医療の現状と問題点、そしてその改善方向について、議論を深めました。

3.『埼玉の救急医療』に対する感想

 アンケート集約結果の詳細は別紙1のとおりですが、こうした一連の取り組みの中で知り得た特徴的な点としては、まず第一に、アンケートをお願いした239の救急告示医療機関のうち、実際に救急医療を行っていない病院がかなりあるのではないかということです。

 アンケートに記入できない理由のなかで、すでに「救急指定を返上」したり、「今後返上する予定」の病院も幾つかありました。まったく回答のなかった病院のなかにも、実際には救急病院として機能していない医療機関が結構あるのではないか、という感想をもっています。

 第二は、夜間、医師が一人で当直している病院が数多くあることです。

 以前は、当直している医師に診てもらえば患者側も納得していたのが、現在ではきちんとした専門医に診てもらわないと満足しない社会情勢に変わっていることから、市民・患者側のニーズに医療側の体制が追いついていっていないことです。そのため、当然の結果として、当直医の専門外の患者を受け入れない、ということが起こっています。

 とくに、科目的には、小児科救急と精神科救急の体制が非常に弱いとの声が、医療者側から数多く出されています。

 第三は、救急医療自体が赤字部門であるということです。アンケートをいただいた多くの病院が、救急医療に対する行政からの経済的援助を強く求めており、非常に財政的に苦しい中で、医療機関の大変な努力によって、現在の救急医療が行われている実態があります。

 第四は、市民・患者の側に、こうした救急医療の実際の姿が、全くといってよいほど伝わっておらず、いざ救急にかかる時になってはじめて、その事実に直面することになります。

 私たちが、『埼玉の救急医療大探検』と『医療サミット埼玉2002』を行って感じたのは、一人ひとりの市民が、自らの命に関わる医療に関する情報を持つことが、何よりも重要だということです。と同時に、市民・医療者・行政三者による話し合いが、救急医療制度を改善する上で、非常に大切だということです。

 私たち市民がいざ救急を必要とする事態となっても、最善の医療サービスが受けられるようにするためにはどうすれば良いのかを、市民・医療者・行政の三者できちんと話し合い、埼玉県における救急医療体制のあり方について、税の投入のあり方も含めた社会的合意を作り出すことが、埼玉における救急医療の問題点を改善し、安心してかかれる救急医療を実現するための近道だと考えます。

 以上のことから、私たち「市民の医療ネットワークさいたま」と「埼玉の救急医療大探検ボランティア」メンバーの総意を持って、埼玉県の救急医療について下記を提案いたします。


 

4.『埼玉の救急医療』に対する市民からの提言

1.救命救急専門医が常駐する救急司令センターを設置する。

 東京都と同じように、救命救急専門医が常駐する救急指令センターを設置し、全県をカバーして、救急車とのやりとりを行いながら搬送先医療機関を決める

 トリアージ(振り分け)機能をはたす。

  (全県での実施が難しい場合は、川口市民医療センターを中心として、川口、戸田・蕨医療圏で先行実施する。)

2.現在ある第3次救急医療機関の機能を、さらに充実する。

 第1次、第2次医療機関を常にバックアップできる体制を取れるように積極的な財政援助を行い、その機能を充実する。

 あわせて第2次救急医療機関の若い医師たちの救急研修を実施する。

   (全県での実施が難しい場合は、大宮赤十字病院を中心として、浦和・与野医療圏で先行実施する。)

3.第2次救急の輪番制を充実する。

 公的病院の役割を明確化して輪番制に組み込み、第2次救急医療機関の輪番制を充実する。そのため財政支援を強化すると同時に、輪番日の医師数、技師数など医療体制の基準を決め、その役割をきちんと果たすようにさせる。

 また、救急医療圏ごとにバランスの取れた専門科別の当直体制となるようにする。

  (全県での実施が難しい場合は、所沢、朝霞医療圏で先行実施する。)

4.小児医療センターの設置(9カ所)

 夜間・休日にどんな患者も受け入れる小児医療センターを設置し、第2次、第3次救急医療機関との連携でトリアージ機能をはたすとともに、単なる時間外受診者のニーズにも応えて、本来の救急医療の妨げにならないようにする。

 設置に当たっては、県が資金を負担して建設し、運営は医師会・救急指定医療機関等の意向を尊重してそのあり方を決定する。

 (全県での実施が難しい場合は、県立小児医療センターと大宮医師会市民病院を中心として、中央医療圏で先行実施する。)

5.精神科救急受入施設の設置(6カ所)

    第3次救急医療機関に準じて、精神科救急受入施設を設置・指定し、受入体制を整備する。

   (全県での実施が難しい場合は、東部医療圏で先行実施する。)

6.医師会の協力と連携

 当直医の翌日の連続勤務をさけるように、救急医療機関の昼間診療に、地域の医師会会員が、輪番で当該医療機関に勤務する態勢をとる。

  (全県での実施が難しい場合は、川越医療圏で先行実施する。)

7.救急ポスターの配布

 救急時の対応と医療機関一覧・連絡先など、誰にでもわかるように、電話の近くに貼れる救急医療圏ごとの救急ポスターを作成し、全戸配布する。

 あわせて、iモード等による情報提供を充実する。

8.救急に関する市民の啓発

 中学校と高校の保健の時間に、実際に救急に携わる医師、看護士、救急救命士などを講師として、埼玉県における救急医療の実際や利用時の知識など、救急医療教育を行う。


                         


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