2002年01月20日

医療サミット埼玉2002                 『知っておこう埼玉の救急医療の実際』
    --
その問題点と改善策

 ◆ アンケートにご協力いただきました。医療機関リストは → 

           《パネリスト》
− 救急車で患者を病院に運ぶ消防の立場から、
越谷市消防職員協議会副会長・中村隆雄さん

− 県内に230ある第二次救急医療告示医療機関の立場から
大宮指扇病院副院長・日下部伸三さん

− 県内に6ヵ所しかない第三次救急の立場から
川口市立医療センター救命救急センター副部長・今明秀さん

− 当番制をひいて地域の救急医療・夜間・休日医療を担っている開業医の立場から
大宮医師会副会長・山崎博さん

 ◆ 詳しいプロフィールは  


index
救急医療大探検の報告
救急医療の現状
救急医療の問題点
小児救急医療はどうすればいいのか
行政のはたすべき役割
市民のやるべきこと

   ■ 市民ボティアによる埼玉の救急医療大探検の報告■

医療サミットは1995年から、市民と医療関係者と行政が一緒の場で医療関係の話をしようと始まりました。今回で5回目を数えます。今回は、救急医療をテーマに話し合いをします。
この『医療サミット埼玉2002』に先立って県内の救急告示医療機関ヘアンケート調査を行いました。これは市民ボランティアによる「埼玉の救急医療大探検」という形で、県内約230の救急告示医療機関うち150を訪問し、残りは郵送でアンケートを行いました。その報告をパネルディスカッションに先立ってやらせていただきます。

 【佐藤澤子さん】

 『市民の医療ネットワークさいたま』は、1992年1月、ちょうど10年前、だれもが安心してかかれる地域の医療態勢をつくるために活動する市民団体として誕生しました。この10年間、市民が実際に受診して得た医師や歯科医師についての情報を、よりよい地域医療を実現するためのアンケートとして寄せてもらいました。その数も8,594になっています。
 そのアンケートのなかに、救急医療や夜間・休日診療に対する不安や不満が多かったことが、今回の「医療サミット埼玉2002」に繋がっています。
昨年4月から10月の6ヶ月間で、埼玉県内にある約230の救急告示病院すべてにアンケートをお願いする「埼玉の救急医療大探険」を実施しました。
51人の市民ボランティアが、何回も足を運んだり、電話をしたり粘り強い取組を行って、最終的に114の医療機関からアンケートを回収しました。

 【田沼晴美さん】 

半年間大探険に参加した田沼です。感想と報告をします。
  個人的には家族が大病をしたりしたのでいろいろな病院にかかってきました。いろいろな病院を見てきました。それぞれ治療などに違いがあると感じてきていました。自分も数年前に思わぬ病気をしてから、いつ救急車のお世話になるか判らないという不安が現実になってきました。普段かかる医者は自分で選べますが、救急だったらどうなるのだろうと心配していたときに、この"大探検"のことを知って、是非確かな情報で地域の救急病院の実態を知りたいと参加しました。
 自分の住まいを中心としたグループ分けで、私たちは3人で浦和地区の半分を担当しました。初対面の3人でしたが、救急医療の実態を知りたいとか、どこの病院なら安心してかかれるかなど共通した思いでした。2次救急・3次救急ってなんだろう? など一般の市民と同じレベルでの取り組みでした。10軒は電話で依頼し、後の7軒の病院を回りました。アンケートを依頼し後日回収に伺うという方法です。お忙しいこともあり、じゃあ書きましょうと初めから言ってくれる所はありませんでした。けんもほろろに断られたり、2度3度と訪ねたり、電話をしたりを繰り返しました。期待していると「医師のほうから反対があって」と事務から断られたり、「医師会を通してくれないとできない」といって断られたり、「理由は言えないけど今回は遠慮させてくれ」と言われたりして断られたところもありました。本音は違うところにあったかもしれませんが・・・。
 結局、アンケートが貰えたのは7ヵ所のうち3ヵ所でした。中にはいかに自分の病院が患者本位かをアピールしたところもあったし、途中で探検隊のことが新聞に取り上げられたことで、さらに理解を示していい返事をくださったところもありました。
 大探検をやって感じたことは、救急の実態を知りたいという我々の声を普段からもっと医療側に届けておかなくてはいけないということと、医者と患者側の距離が遠いと思っていたけれど、病院の壁は思ったより更に高かったということです。

 【村西省司さん】

 田沼さんと少し違った観点から、お話します。我々が分担したのは、戸田・蕨地区で6病院、春日部・越谷地区で6病院、電話対応のみですが川越市のほうで4病院。救急病院としてのアンケートを回収するという非常に単純なことなのに、やってみると様々なバリアーを感じて難儀しました。
 1回の訪問でアンケートに協力していただいたところは1軒もありませんでした。嫌がられながらもしつこく催促して、最終的に2軒の大きな病院以外は協力していただきました。2軒は拒否されました。救急の実態を市民に誤解されては困ると恐れているところが多いと感じました。感想の第1です。
 感想の第2は、救急告示病院というのは同じように見えるが、内実はばらつきがあると感じました。自分が住んでいるところの救急病院がどういうレベルにあるかは市民では判らない。今後の課題だと思いました。救急告示をしていても実際には全然患者を受け入れていない病院もあって、このアンケートがきっかけになって県に救急告示を返上したという例も聞いています。感想の第3は、厳しいなかでも奮闘している病院がいくつもあることを発見でき、安心した面もあります。
 プラックリストとして病院名はここでは発表できないが、私が好ましく思った病院名なら発表してもいいかと思い名前を出させてもらいます。
 まず、当会の上田代表とメールの交換がきっかけになり、川口市立医療センターという第3次救急の大きな病院ですが、そこの浅井院長先生と会見できたというのが大きな収穫になりました。
『市民の医療ネットワークさいたま』のメンバー6名で、約2時間ほど救急医療の色々な面に関して話し合いが 出来たことは本当にうれしかった。
 もう1つ戸田中央病院というのがあります。ここは病床431床でドクター100名、看護婦400名という規模の大きいところで、だからこそ出来るのかもしれませんが、救急の責任者のドクターが戸田・川口・蕨方面の地域の救急隊員を集めて定期的に救急の実例に基づいた勉強会をずっとやっているという。感動しました。それから与野消防署に聞いたのですが、3次救急である大宮日赤でも同じように皆さんで勉強会を続けているということも伺い心強く思いました。
 埼玉の救急医療態勢は東京に比べて10年、それ以上遅れていると私どもの勉強会で聞いてからこの大探検が始まったのですが、それを裏付けるような探検になりました。
しかし、医療提供者側と市民側とで望ましい救急医療態勢を創りだしていくというきっかけになると確信しています。

 【佐藤澤子さん】

 大探険の試みは私たち市民はもちろん初めてでしたが、病院側もこうした市民団体からのアンケートを受けるのは初めてとのことで、戸惑いも大きかったようです。救急医療が様々な問題を抱えていることもあって、多くの医療機関が協力してくださったと考えています。
 そのアンケートの中身を踏まえて、パネルディスカッションの話になります。我々の率直な感想として、救急医療の実際の姿、医療側の苦労などがほとんど市民側に伝わっていないと感じます。それが最大の問題かとも考えています。 
 今日のディスカッションで、市民はもちろん医療者側も、埼玉県の救急医療、夜間・休日診療の実際の姿と、今後のあり方をきちんとイメージできればうれしいですね。

■ パネルディスカッション■
司会 前半=江野本啓子さん
   後半=有路美奈さん

1、救急医療の現状はどうなっているのか?

 【司会(江野本さん)】
 市民の立場から実際の救急医療の現場がどうなっていて、どんな課題を持っているのか。どんな方向性に導いていけばいいのかを今日の発言のなかから明らかにできたらいいと思っています。
市民としては突然熱が出たりしてパニックになって病院に行くのだけれど、病院側からするとなんでもかんでも救急医療のところに患者がたくさん来る。本当に診なくてはいけない患者に手が回らなくなる。そんな実態も知ってほしいということが、実際に現場で働く皆さんには数多くあるのではないかと思います。
そこで、初めにみなさんのお仕事の紹介を含めて、発言をお願いいたします。




 【中村隆雄さん】 
越谷市の消防署に勤務しています。消防が担っている救急業務の現状と概要、越谷市の実情を踏まえてお話します。越谷市のプロフィールは、人口31万人、117,000世帯。面積60キロ平方m。都心から25Km圏内。典型的ベッドタウンです。
 消防体制は、1消防本部、1消防署、5分署。職員数261名。救急車7台。1台予備車。救急を担当する職員54名。越谷市では専従として救急隊は救急業務しかしません。勤務は8:30から翌日の8:30までの24時間拘束勤務。3班による交代勤務。3日に1回の泊まり。 救急業務=昨年の出動件数は9,613件で421件増。平均1日26件。54分に1回出動。搬送人員9,023人。市民34人に1人が利用したことになる。全国平均と大差ない。
事故種別=多い順に急病52.3%、交通事故19.9%、一般使用(階段からの転落・歩いていてつまづいて倒れた等)10.9%、病院から他の病院に搬送という業務8.8%。その他喧嘩・火災等。程度別=ほとんどが軽傷。軽症が52.9%。軽傷というのは入院加療を要しないもの。重症に至らない軽傷以外のもの34.2%(中等傷)、3週間以上の入院加療を要す重症11.4%、死亡が1.4%。疾病としてはっきり診断されているもの=循環器系が2割弱。呼吸系8.8%、精神系6.1%(増えている)。
救急要請の流れは、事故形態、症状問わず、大半が不安感や緊迫感を呈しての119番通報・受信から始まります。通報には当然、的を得ないものがあり、その少ない情報を元に隊員は現場に駆けつけるわけです。
現場に到着したらまず観察をする。傷病者本人からの訴えを聞いて、病院を選定する。一番問題が医療機関の選定。越谷市の場合はかかりつけ医や希望を聞く。それを先。家族が希望する場合もある。希望がなくて救急のほうで探してくれと頼まれれば探します。わがままな方もいて、どこそこの病院は嫌、どこは嫌という。そういう人ほど軽傷です。
 消防がする業務は、病院前救護プレホスピタルケアと言います。救急機関との連携が重要。病院前救護の態勢の充実を目指して平成3年4月に救急救命士制度ができました。救急救命士が何をやるか知らないと思いますが、誤解されては困ることがあります。現場に行ったときに「注射をしてくれ」と言われることがあるが、我々にはできません。
 簡単に言うと救急現場から医療機関に搬送する間に、医師の指示によって医療行為の一部を行うということ。ひとつは心臓が止まっている人に電気刺激を与える。あとは乳酸化リンゲル液による静脈の確保、食道閉鎖式エアーウエーまたはラリンゲアルマスクによる気道の確保。この3点を行っています。先生方との密接な連携が重要かつ不可欠。救急救命士制度ができたがあまり実績は上がっていないと思われます。

【日下部伸三さん】 

卒業後医局に残らずに、心肺蘇生と正常分娩の介助は医師免許所有者の必要条件と思い、外科、麻酔科、整形外科、産婦人科、救命救急センターをローテーションする都立墨東病院で臨床研修を行いました。その後は整形外科を専攻し、北品川病院、渋谷の日赤医療センター、埼玉医大総合医療センター(整形外科と救命センターを兼務)。その間、救急医学会の認定医をとり、平成7年から指扇病院副院長として現在に至っています。 
第2次救急の現状についてお話しします。当院の救急態勢ですが、夜間・休日は内科1名、外科系1名で診療しています。救急外来は主に外科系の医者で、外科、脳外科と整形外科で輪番で対応しています。外科医は内科系の疾患を診れますが、内科医は切ったり貼ったりはできないので、こういう態勢になります。理科系の人は文系を受験できますが、文系の人は理科系の受験が出来ないと考えて頂ければ分かり易いかと思います。
 外科、脳外科、整形外科、麻酔科は24時間、365日オンコール態勢で、いつでも緊急手術が出来る態勢を取っています。但し、医師個人の使命感、責任感に頼る所が多く、私も当直やオンコール態勢で24時間365日ほとんど拘束されています。
最近、家族全員で出掛けたのはコジマ電気に洗濯機を買いに行った時だけです。
 単なる時間外診療と本当の救急患者の割合ですが、一般の方々はご存じないと思いますが、基本的な重症患者の分け方は、外来で対処可能なものを1次、入院が必要なものを2次、死にそうな重症を3次としています。外来で対処できるものを単なる時間外診療、入院が必要なものを本当の救急患者と考えるならば、当院では3割ぐらいが救急患者です。
 県下に220ある2次救急病院のうち何件くらいが救急医療をしているかということは、正確な数字は誰も把握していないと思いますが、24時間365日緊急の血液検査が出来て、レントゲン・CTスキャンが撮れて、緊急手術が出来るというのは、私個人の漠然とした印象では3割ぐらいで県下で60前後の医療機関ではないでしょうか。
 2次救急医療機関から観た問題点は、そもそも患者さんにとって1次・2次は全く関係ない訳で、患者さんの二一ズがすべての救急医療機関に専門医のレベルの診断と治療を要求していることだろうと思います。
 私が医師になった16年ぐらい前には、入院患者を診る当直の先生が片手間に外来を診るというレベルでよかったのですが、今は1次救急の患者さんも、二一ズとしては専門医レベルの診断と治療を要求しています。これが問題ではないかと思っています。
 一般の方はご存じないと思いますが眼科、耳鼻科を含む全科に専門医を当直させている病院は、日本ではほとんどないと言っていいでしょう。埼玉県で全科の医師が当直しているのは埼玉医大の毛呂の本院、川越の埼玉医大総合医療センター、防衛医大の3つしかありません。さいたま市立病院(旧浦和市立病院)でも外科、脳外科、整形外科、眼科、耳鼻科が外科系を輪番で担当していますが、全科の医師が常駐しているわけではありません。例えば、鼻血の患者を耳鼻科の先生が診るとは限らないということです。
 私がいた都立墨東病院や日赤医療センターのような500床以上の大きな病院でも、一般外科医は当直していますが脳外科・整形外科・耳鼻科・眼科がいつもいるわけではありません。指扇病院でも、一時耳鼻科の時間外外来を耳鼻科の先生の好意で受けることにしましたが、鼻血や中耳炎の患者が川口も浦和も飛び越えてわざわざ草加の方からやってきて、耳鼻科の先生が寝られない状態になってしまって止めざるを得ませんでした。
 副院長という役職上当直表を組みますが、ひとつの科で24時間365日オンコール態勢をひくには最低2人の専門医が必要です。1人ではその人が24時間365日拘束されてしまいます。24時間365日の当直態勢をひこうとすると最低でも4人必要です。4人いても31日を4で割れば月に8回、週2回の当直が回ってきます。
 一般の方には理解しがたい事ですが、医師には当直明けがありません。徹夜で当直しても次の日は通常勤務なので、36時間連続勤務も当たり前です。特定の科で24時間365日態勢をひくなら、最低6人は欲しい訳で、6人なら月5回の当直なので、何とかなるかなという所です。これで大きな病院でも全科の当直態勢は取れないということが判って頂ける思います。
 従ってどうしても当直の先生が専門外を診る事になります。例えば、救急隊が現場到着時、頭を打った患者さんが意識が鮮明で普通に歩ければ、1次・2次の医療機関に搬送すると思いますが、そこには脳外科の先生が当直しているとは限りません。CTが撮れるとも限りません。実際、外科の当直の先生が頭をぶつけた患者さんを診察して、その後に頭蓋内血腫ができて亡くなった例では病院側が裁判で敗訴しています。
 これを満床だとか専門外として受入れを断っていれば、訴訟になる事も業務上過失致死に問われることも無いわけです。こういう判例が増えていくと、好意と使命感で専門外の患者を診てやろうという医者はますます減ってしまう と思います。
 先日、杏林大学病院で喉に刺さった割り箸が頭蓋内にまで達していて亡くなった子供さんの件も、聞くところによると東京23区の救急病院が全部断ったので三鷹の杏林大学病院に搬送された様です。三鷹地区では杏林大学は救急医療を頑張っている病院です。何処の病院も引き受けない患者さんを勇気を持って収容した病院の先生が業務上過失致死で刑事責任を問われ、断った病院がお咎めなしというのはいかがなものかと思います。
 医療側からすると、もう少し救急医療に対して頑張ったものが報われるようなシステムにしていただかないと、やっていられないなというのが本音です。

 【司会(江野本さん)】 救急医療の現場は我々が考える以上にハードだという様子が伺えました。

 【今 明秀さん】 

 うちの病院は救命救急センターを備えています。県内6軒のうちの一つ。北は岩槻、大宮から、南は三郷、和光、東京から患者が運ばれてきます。
 うちは院内、総合病院に併設されている救命救急センターです。530床の病院。埼玉唯一の基幹災害医療センターです。阪神大震災のような大きな災害のときに重症患者が一気に来る。荒川が氾濫したときも一手に引き受ける。秩父方面での土砂崩れなども引き受ける。平時は使わない薬品、機材も保管している。医療圏は埼玉南部との境で、県内の病気をうちが断れば東京に流れてしまいます。
 救命救急センターは専従型です。救急専門医が9名、うち救急指導医2名、認定医が5名。外科6名、整形外科2名、脳神経外科1名です。当直医2名。たった2名で3次救急をやっています。大変です。そのためオンコール態勢をしいています。当直医以外は全員自宅待機です。ひどい話です。労働基準法を社会で習いましたが、無いも同然です。31床はすぐに満床になるので、病院内の空いているベットはすべて私どもが使っています。だいたい60床ぐらいです。翌日入院の予定があるベットも使ってしまうわけです。だから翌朝のベットのやりくりが大変です。他の病棟の看護婦さんに頭を下げっぱなしです。
  日本救急医学会の認定医・指導医の指定施設です。公立の病院で指定施設になっているのは日本に3つぐらいしか有りません。救命救急センターにはどんな患者が来るのか。風邪の患者などの軽症な患者さんは来ません。外傷の患者さんが多くこれが30%。95年から5年間調べました。2500人来ます。日本一の量です。
 先日の日本救急医学会総会で重症外傷の救命率を有数の病院が発表しましたが、当施設が日本一でした。死亡1100人、クモ膜下出血などの脳卒中980人、薬物中毒600人、盲腸、腹膜炎480人。盲腸などは本当は救命救急センターの対象ではないのですが、患者は強い腹痛が不安で来てしまう。心筋梗塞などの心臓の病気400人。首吊り、餅による窒息、凍死寸前が300人、胃潰瘍、胃ガン、直腸癌、吐血、下血300人、喘息、肺炎、結核300人、痙撃200人、糖尿病がこじれたというのが200人・感染症100人ちょっと、やけど100人ちょっと。救急車できたが1次救急なので帰ってもらった人は除いてあります。
 患者収容時間と重症度分類。日勤には3割しか来ない。夜も3割。明け方・深夜3割。人が寝ている時間に6割が来るんです。死にそうな重傷20%、手術でなんとか一命をとりとめそうなのが30%、2次救急20%、1次救急20%。夜だから医者がいない、深夜だから診られないということは通用しない。1次、2次なら今患者が一杯だから駄目だという断り方が出来るが、3次救急では通用しない。医者はどんどん受け入れるので看護婦も大変。ICUが6床しかないが、うちのICUは入院1日10万円です。たった9人でこれだけ働くのですから、年間2億の黒字です。(皮肉)
 川口市立といっても市立という意識はない。国からの指定を受けているという認識です。救急救命センターに来た患者のうち10%が死亡。たった10%です。退院4割です。それだけ頑張っています。
 システム。当直は月1O回36時間勤務。365日オンコ-ル態勢。情熱がないとやっていけない実情。内科、脳神経科、外科等の連携も大切です。
 スタッフ教育。外傷治療の指導権を取る。一定した治療。初期治療、手術、集中治療、病棟治療、リハビリまで1から2人の救急医が診る。急性の疾患が多くなる。しかし、研修医がたくさん来るわけじゃない。辛いから。だから医者が増えないで9人で耐えている。時々腹が立って患者を怒ることもあります。
 我々の理念。症状で患者を各科に振り分けるのではなく、初期治療、集中治療、リハビリまで一貫した治療を救急医が行う。その救急医は集中治療、外傷外科に熟知した集団。そういう救命救急センターです。

 【山崎 博さん】

 大宮医師会としては乳幼児から高齢者までの救急医療をどうしていこうかと長年やって来ています。かなりの成果をあげているので紹介したいと思います。
 
 医師会として当直は小児科が2名、内科2名、その他脳外科の先生がいます。医師会病院は全国でも4番目に認可された地域医療支援病院になっています。それには4つ条件があります。救急医療をやること、かかりつけ医(診療所の先生)と病院の先生が一緒に話し合いをしながら治療していく共同利用型病院であること。紹介率80%以上。研修機関であることです。
 救急の勉強では救急医療懇話会を持っています。年数回やっています。救急隊の人と医師会の先生方と症例の検討会です。その他学問的な勉強会、講演会は年20回ほどやっています。紹介率80%以上です。この中でも特に力を入れているのが救急医療です。小児救急が全国的に今問題になっていますが、医師会市民病院では365日24時間小児科と内科の1次・2次救急をやっています。この態勢には常勤の小児科医が5名、当直に来るパートの先生がいるが間に合わない。一晩平均40名、多い日は70名来ます。2人の当直医で1人は外来、1人は当直をやっている。間に合わないので、医師会の会員(70歳以上の先生もいる)が自分の診療所が終わってから来てくれます。19時から22時まで一般外来の手伝いをする。会員もシステムを支えています。
 夜間小児科は、多い時は月に1500人ぐらいになります。休日の小児救急の受け入れは1ヶ月700人。朝日新聞の記事では、平成14年度から全国で50ヵ所24時間小児科を受け入れる病院をつくろうという国の方針が載っていましたが、大宮医師会はこの365日24時間受入れというのを22年前からやっています。
 しかし、かかる人には当たり前の態勢で、かからない人はこういう態勢があることすら知らないのが現状です。市内にいた人が他市へ引っ越して、夜中に子供が喘息の発作を起こして小児科医を探すのにすごく苦労したということで、はじめて大宮は良かったと気づくようです。こういう態勢を維持するために頑張っていることを十分ご理解いただきたいと思います。
 休日診療に関しては、内科、外科、小児科、眼科、耳鼻科(産科は各自の診療所でやる)の専門の先生が交代で医師会病院に来て、休日診療を行っています。こういう態勢は大学病院以外ない。よく「休日診療所」と聞きますが、内科系、外科系の先生が1人づつ交代でやるということが多いのですが、大宮医師会の場合は各科の専門医が診療を行っています。私は耳鼻科なので県内の耳鼻科のアンケートを見ましても、耳鼻科の医者が定期的に診療をするというのは大宮ただ一つです。
 休日は平均130名が来ます。年末年始は医療機関が休みになるので、1日300から400人来ます。この病院の特徴は、休日診療で診て、大部分の患者は他の病院を紹介するのではなく、そこで入院できるということです。
 救急医療の情報システム。救急告示医療機関14軒。大宮赤十字病院、自治医大病院、大宮医師会支援病院も入っています。コンピューターでネットワークを組んで、どこの病院には何床空床があって、何科の医者がいるか。例えば、脳外科の先生がいても手術中なら患者は送れません。手術が終わると画面に受け入れ可能が表示されます。システムは作られても最新の情報が入力されないと活用できないため、医師会市民病院の事務が画面変化が余りないところは電話して最新情報を入れるよう督促するなどサポートしています。このシステムで受け入れ可能な専門医のいる病院がすぐわかるのと、救急車の搬送時間が短縮され、たらい回しがなくなる。画面を使って医療機関同士が情報交換できます。
 一人暮らしの高齢者が何かあった時どうするかというシステムも出来ています。一人暮らしの人がペンダント型や腕時計型の発信器を身につけたり、電話機の横にボタンの付いた電話機を置いておき、おかしいときに発信すれば消防の指令本部に信号が行きます。消防署は、間違いもあるので安否確認をするため、電話を入れて確認したり、近くのボランティアが見にいき、何かあれば救急車が行ってかかりつけ医と連携している病院へ搬送するシステムが出来ています。医師会病院は何床か空きを作っておいて必ず受け入れるようにしています。またそのために、在宅医療診療記録を作っています。患者の枕元にかかりつけ医が病名、投薬、訪問看護等について記入しておき、救急で運ばれたときにすぐに治療できるように、またどのような治療までやってほしいかも書けるようになっています。
 これらの態勢を維持するためには、医者だけを集めてくれば出来るものではなく、会員が協力して支えていることを理解してほしいと思います。もっともっと充実させていくよう努力しています。

2、救急医療の問題点は?

 【司会(江野本さん)】

 これからは問題点と課題について議論していただきたいと思います。私たちが行った「救急医療大探検のアンケート」に、救急医療全体について市町村の消防を東京のように一元化させたらどうか、という意見がありました。
 また、県全体の空床、専門医の情報を管理するセンターの建設。2次病院から転送先が見つからない問題。3次機関の充実、増設。そして精神科の患者の受入先がないと言う深刻な声もあります。
 それぞれの立場から、ご意見をお願いします。

 【今 明秀さん】

 患者から見たらどれが1次でどれが3次か判らないと思います。日本は1次2次3次と分けるやり方ですが、外国は疾患別に病院が別れています。日本は患者が判らないような軽傷、中傷、重症で分けて機能させているから、問題は全部を受け入れる規模の病院がどこかに出来ればいいのかもしれないが、今は不可能です。
 また、2次病院がうまく機能していない。病院の数と医者の数はとうに埼玉県は足りている。あとは質を高めるしかない。救急医療に関して質の高い医者を養成する必要があります。

【日下部伸三さん】 

 日本の救急医療が抱えている問題は、潤沢な財源があればほとんど解決すると思います。財源さえあればナースも医者も増やせますし、全国の救急病院で全科の先生を365日24時間当直させれば問題は解決する訳です。
 しかしながら、アメリカのオレゴン州の医療保健管理部局には「Cost, Access, Quality, Pick any two」という言葉が額に入れて飾られているそうです。これほど保険医療の本質を的確に表している言葉はないと思います。意味はコストとアクセスと質を3つ一緒に達成するのは不可能であり、一つは犠牲にせざるをえないということです。
 日本はコストを抑制し、アクセスも保証してきたので質は犠牲になったのではないでしょうか?。
 マスコミは情報公開が重要と言いますが、最低限の予備知識として知っておいてほしいのは、日本の医療費は国際的に見て決して多くないということです。日本のGDPはOECDの中で第2位ですが、総医療費のGDP比は7.6%で18位です。1位のアメリカの医療費の対GDP比は13%です。高齢化率と一人当たりのGDPが比較的近いドイツ、フランスの総医療費の対GDP比は10%前後あり、GDP比で約2%、日本のGDP500兆円なので少なく見積もっても約10兆円は少ないと考えられます。
 国民負担率も日本の高齢化率は17.8%で既に欧州諸国とほぼ同じなのに36.9%に過ぎません。国民負担率とは税金と社会保険料が国民所得の何%を占めるかという事ですが。欧州諸国ではスウェーデンの70%をはじめ、軒並み50%以上です。アメリカの国民負担率は35.8%ですが高齢化率も12.6%と低く、国民皆保険制度もありません。
 消費税も欧州諸国ではスウェーデンの25%はじめどこも15%以上です。アメリカでも州によって差がありますが、8%前後あります。
 イギリスの総医療費の対GDP比は6.7%で日本より少ないのですが、その結果アクセスに障害が生じてきて、ガンと診断されてから手術までに何ヶ月も待たされて、手術を受ける時には既に転移が進んでいたという事例が見られる様になりました。そこでブレア首相がドイツ、フランス並に医療費の対GDP比を引き上げると政策転換を発表していますので、日本人の健康と命の値段は晴れて先進国で一番安くなります。日本の国民医療費が30兆円で多いと言っても日本人が年間パチンコに使うお金も30兆円です。
 日本の医療費は決して多くはな いのですが、そのパイの切り方には問題が多いと思います。欧米に比べて、薬や医療材料が高すぎます。大体、アメリカの3から5倍します。私は整形外科医ですが、例えばジンマーという会社のという骨折の手術で使う固定材料がアメリカでは6万円のものが、日本では全く同じものが18万で取引されています。それにひきかえ、医者の技術料は屈辱的に安い。大体、アメリカの8分の1から10分の1です。
 例えば、手根管症候群という手関節で神経が圧迫される病気の圧迫を除去する手術は日本では42,900円ですがアメリカだと36万円です(平成14年の診療報酬)。
 更に、日本の保険医療では手術室の看護婦や外来の看護婦の看護料はありません。この低い技術料で手術室のメンテナンスと看護婦さんの給料も払わなくてはいけない訳です。
 米国並の財源があればアメリカ以上の医療サービスを提供できると思います。
ちなみに私の妻がアメリカで入院したとき、その病院はプライバシー重視なので個室しかなかったのですが1泊16万円でした。欧米の病院の在院日数が短いのは医療費が高いからです。

 【司会(江野本さん)】 財源という切り口で話していただきました

【中村隆雄さん】

 救急業務を担っている視点からコメントします。
救急態勢上、関係機関にリアルタイムで情報の共有化と医療の態勢作りが求められていると思います。現状、夜間・休日の傷病者の受入れ状況を見ても、救急医療でも総合病院に収容が偏っていると思う。東京都の救急医療態勢では突然の傷病者が、いつでもどこでも症状に応じて適切な医療が受けられる態勢の強化を基本方針に、関係機関が連携して態勢構築が進められていると聞いています。
 埼玉県内でも関係機関が協力して情報の共有化を進める必要があると思います。例えば、救急の医療情報は各消防本部に入ってきます。パソコンですぐ出せます。私はまだ119番を受けたことはないが、昨日指令本部に行ってパソコンを見た。どの病院に何科の先生がいて、何床空いているというような情報が朝晩に入ってくるのですが、あるところを見ると驚いたことに去年のデータが入っていました。全然変えていない。そういうところを基本的に改善していかないと進まないと思います。

 【司会(江野本さん)】 ありがとうございました。最後に医師会の立場からお願いします。

 【山崎 博さん】 

 今、消防の方から話がありましたが、大宮市でやっている緊急情報システムはさきほど言ったようにデータが入れ替わらなくては全然意味がありません。システムは出来ているけど動いてないということです。そこで医師会病院がキーになって名病院に問い合わせをします。「変わってないがどうなっているんですか」という問い合わせで、常に新しい情報で動けるようにしています。 
 今先生がおっしゃったように1次から3次までやれる大きい医療センターが出来てしまえば楽だというのも確かにそうなんですが、医師会としては今ある救急告示病院をどう利用して皆さんの救急にどういう受け入れ態勢が出来るかということを考えています。
 普通は診療所と病院の連携、病診連携ということを医師会の主な仕事にしていますが、大宮医師会では何年も前から病病連携もやっています。病院と病院がどうやって連携するかですね。例えば同じ脳外科にしても市内に幾つか病院があります。救急で脳外の患者を運ぶときに、ある病院は手術中で受けられない。じゃあこっちはどうかということがシステムですぐ出てくる。また、医師会に各救急告示病院の各科の先生に集まってもらい、脳外のグループ、心臓の先生のグループなど専門別のグループで話し合い、お互いに連絡を取って連携がうまく行くようにしています。
 夜間はやっている科が限られるから、同じ科が重ならないようにしていく。例えば夜間・休日の脳外も、当直日をお互いに調整し、1週間何処かでやっているようにするための話し合いをしています。今ある医療資源を有効に使うということで病病連携をすることが大切です。
 小児科の365日24時間の受け入れ態勢も、金・土は患者が物凄く多いため、小児科の先生方の話し合いで、金曜日は大宮総合病院で小児科を一緒にやりましょう、土曜日は日赤でやりましょうという形でシステムができています。
これからは、今ある資源をどう活かすかという進め方も一つではないかと思います。
 もう一つ、受入れの話ですが、患者さんの方も少し勉強していただきたい。日曜日に耳鼻科当番で出ていますと、患者さんが来て、こちらから「明日からは専門の先生の所に行ってくださいね」と言うと、患者さんが「また来週の日曜日に来ます」という人がかなりおります。
 私たちは貴重な日曜日を削って当番しているのにそういわれるとがっかりします。普段は一般の病院にかかっていて、緊急で病気にならないようにメンテナンスをしておいて、それでも救急だという場合に初めて来てほしい。そういうことも考えていただきたいと思います。

3、小児科救急医療はどうすれば良いのか?

 【司会(江野本さん)】

 患者側もしっかりそのへんの事情を認識していかなくてはいけないですね。それでは個別の問題についてお話いただきたいのですが、アンケートのなかでも一番多かったのは小児医療の問題でした。これについて個別の課題を話していただきたいと思います。
 患者からするとわが子が溌熱したり急変するわけで、それだけでパニックになって、ともかく病院へと救急医療を利用する。病院からすればここに来なくても1次で充分間に合うとか、専門の医師がいないとか、様々な理由で病院側も困惑しているということが出されていました。医療側、利用側がお互い理解を深めていくことも大きな課題だと思います。

 

【山崎 博さん】

 先程スライドで示したように、大宮医師会では22年前から365日24時間態勢をやっています。ただ全国的に小児科医が少ないため、あちこちの病院で小児科が急になくなるということがおこっています。逆にいうと医師会で今5名の常勤・パートの小児科医を集めることは大変なことで、あちこちの大学へ行って、頭を下げて何とか確保しているのが現状です。小児救急は医者を集めるのが物凄く大変なんです。当直医も他の科の先生より割高になっています。
 患者側も考えてほしいことがあります。来る患者さんの親に聞くと、昼間から熱があったというのが大部分なんですね。昼間は小児科の専門の先生が多数いるわけですから、そこで治療しておいてくれると、夜間慌てなくて済むと思います。小児の場合、口ではっきり言えないことがあるので、普段から子どもの状態を良く観察してもらって(目がくぼんでいるとか、不機嫌だとか)、対処してくれれば夜は慌てなくて済むと思います。この態勢を維持するのはとても大変だということをご理解いただきたい。また会員が自分の診療がおわったあと、医師会病院へ来て7時から10時まで、毎晩サポートしていることをご理解いただきたいと思います。

 【司会(江野本さん)】 消防の立場から、ご意見をお願いします。

 【中村隆雄さん】

 業務からいうと小児の利用が全体の一割です。事故死別の急病範囲だと小児は4割ぐらい。ほとんどを越谷の市立病院、独協病院で収容されています。当然掛かりつけの小児診療所とかで収容されることもある。現在では現場で小児救急の受け入れ先を探すのに困ったということはありません。逆に越谷市立病院の事情を聴くと、特に休日夜間に小児救急は増えるばかりだそうです。年末年始は救急の半分は小児だったと記憶しています。対策として越谷市では小児救急に対する市民からの強い要望を受けて、平成15年度だと思ったのですが、小児夜間急患診療所が開設されることになりました。今準備を進めています。
 どのくらいの利用があるか分からないのと、市民の側に第2次、第1次ということを分かってもらわなくてはならない。それと合わせて、1次の患者は夜はそこにはなるべく行ってほしくないとかそういうことをPRしないと、市立病院などの総合病院に集中している夜間などの患者の緩和にはならない。救急車で患者にどこに行きたいかを聞くと、だいたい大きい病院。診療所に行きたいという人は稀です。

 【日下部伸三さん】

 以前勤務した病院の時間外待合室でお母さんたちが「この時間に来ると待たずに診てもらえるのよね」という会話をしていました。時間外診療をそういう利用の仕方をしていると、そのうち小児科の医者はいなくなると思います。小児科の当直はほとんど寝られない。診療報酬が安い。親からはすぐに苦情が来る。誰もやりたくない条件がそろっています。
 うちの病院も以前は内科の先生が、小児科を診ていましたが、入院患者さんが急変して、喘息のお子さんを5分待たせた時「お前の病院でうちの子どもは殺されそうになった」とお叱りを受けました。前述の様に、患者さんの二一ズが専門医の診断と治療になっている状況では、小児医療は負のリスクが大きすぎるということで、外傷を除く、いわゆる病気の子どもの診療はお断りする事に致しました。
 山崎先生からも話がありましたが、小児科に限らず、どこの病院も当直医を確保するのに苦労しています。バブル以降、日本人全体に「楽で給料のいいおいしい仕事」ばかりを求める風潮があって、医学部卒業生も例外ではありません。外科、脳外、救命センター、小児科を選択する医学生がほとんどいない状況です。緊急時や時間外の呼び出しの無い、眼科、耳鼻科、皮膚科等を選ぶ傾向があります。
 私の弟も8つ下ですが皮膚科医になってもう開業しています。
 私が都立病院の救命救急センターで研修医をやってた時は、週5日当直でした。そもそもレジデントというのは「住み込み」という意味で、病院に住んでいる人のことですが、今の医学生にそんなことは全く通じません。週2日の当直でも「多い」と不満がでます。
 巷では失業率が高いと言いますがが、楽でおいしい仕事がないだけで、医者の当直、ナースの当直、事務局の当直ならいくらでもあります。当院に当直しに来てください。

 【司会(江野本さん)】 第3次の立場からよろしく。

 【今 明秀さん】 

 私どもの救命救急センターは、小児の患者もたくさん運ばれてきます。小児の場合は自分で言わないのでどれが軽傷でどれが重症がはっきりしない。従って、運ばれてくる子どもの半分以上は軽症です。軽症といっても中には重篤なものも混じっているので、救急隊から子どもの要請があれば全部診ています。小児の重症はほとんど人工呼吸が必要になる。私どもでは重症小児患者は小児科病棟ではなく、救命救急医が救命救急センターで診察治療を行っています。ある程度軽傷になってから小児科に渡すというシステムです。重症な子どもは小児科を指定しないで救命救急を指定して下さい。救急隊に頼めば、救急隊が判断して振り分けてくれます。救急隊がトリアージ(選別)します。だいたい当たるので信じて従って欲しい。わがままを言ってもトラブルになるだけで、救急隊はかなり勉強しているから信じてください。

 【司会(江野本さん)】患者は大きな病院に行けば安心という神話があって、不安が先になる。患者も救急についてきちんと正確な情報を持っていかなくちゃいけないと思います。

、行政が果たすべき役割は何か?

 【司会(有路さん)】

 救急医療を充実する上で、行政の役割が重要になってくると思います。アンケートの結果を見ても、個々の医療機関の努力だけですべて解決できるものではないですね。埼玉県及び各市に対する要望などの提起をお願いします。
 行政というとイコール予算というのが出てきて、行政の免罪符のようになってしまう。確かに国の予算、厚生労働省の予算と順々に下りてくるので、一県一市町村の裁量になるものはどれだけあるかわかりません。家族で考えると、一人病人が出たから今年は旅行をやめようとか、やろうと思っていたリフォームを辞めようとなります。
 縦割り行政も同じで、他から予算はこない。一番弱いところ、福祉とかに予算を配分してほしいと思うのが一般の考えです。少ない予算の中でも要望を出していって、少しづつシステムや予算の割り振りについて考えていきたいと思いますので、ご提起ください。




 

【日下部伸三さん】

 このセッションでは、ホームレスとか精神科救急の問題に触れたいと思います。ホームレスの患者、薬物中毒の患者、精神科の自殺未遂の患者などはどこの病院でもあまり診たくない訳で、ホームレスや自殺未遂の患者さんが公的病院に断られて我々民間病院に来る事もまれではありません。ホームレスの患者さんは衛生的にも問題が多くて、隔離を要することも多いのですが、当然個室の差額料も請求できません。本人にその意思が無い場合生活保護の申請もできません。生活保護の申請をする前に無断で退院して、治療費を踏み倒されてしまうこともあります。
 退室後の個室の消毒も必要ですが、業者を入れると5万円ほどかかりますが、これも病院の自腹です。これらの 患者は本来補助金をもらっている公的病院、精神科を併設した公的病院がやるべきではないかと思います。
 現状では、公的病院のホームレス患者や精神科救急の受入れはいいとはいえません。時に精神科の患者が暴れて、警察を要請することもあり、何で補助金ももらっていない民間病院が身の危険を感じながらこういう救急患者さんの受け入れなきゃいかんのかと思います。
 私がこういう会に出るといったら、川越の埼玉医大救命救急センターの教授から「ぜひ言ってくれ 」と言われたことがあります。今先生のところもそうだと思いますが、3次の救命救急センターには、補助金が出ていますが、赤字のところにしか出ない補助金制度というのは見直すべきだと思います。
 今先生が先ほど「うちの施設は黒字だ」と仰ってましたが、頑張っているから黒字が出る訳です。補助金というのは黒字が出れば切られてしまう。なまけて働かな くて赤字の病院に補助金が出て、頑張って黒字にした病院には出ない訳です。
 長野県の田中知事も言っていましたが、頑張ったところが報われないという補助金というシステムはそろそろ見直した方がいいと思います。
 ちなみに公的大病院では、頑張って急患をたくさん収容しても「満床だ。専門外だ」と言って全部断ってもナースやドクターの当直料は同じです。これでは質もサービスも改善される訳が無いと思います。ここにこそ小泉総理の構造改革が必要です。公的病院も、医師やナースの給料に能力主義・成果主義を導入したらいいと思います。
 私の病院では少しだけこの能力主義を導入しました。たくさん患者を診た先生と急患を断るような先生とで少しだけ差をつけました。それだけで、救急車の受け入れ台数が以前の2.5倍(私が副院長になった当初と2002年現在を比較して)になりました。プロ野球の世界でも打率3割、ホームラン40本、100打点の選手と、打率2割、ホームラン5本、10打点の選手では年俸に差がある方が公平です。当直者の確保が大変なのですが、たくさん急患を診た医師や看護婦にはそれだけ支払うというシステムに変えないと根本的に変わらないと思います。

 【今 明秀さん】

 救命救急センターは黒字です。財政的に間に合っている。何故か?やってる医者が少ないから。医者が少ないから黒字。今は9人でやっています。20人位が丁度いいのですが、20人に増やしてくれればきっと丁度いい赤字になると思います。そうすると国からの補助金がもらえます。
 川口医療センターは救命の他に救急の外来があります。全く別の組織で、そっちは大赤字です。それは1次、2次の病院と同じようにいろんな問題を抱えています。救急外来を考えると、もう少し国は援助してほしい。救急救命センターを考えると厄介な規則を作らないでどんどんお金をいただきたい。それが行政への意見です。
 それから精神科の問題です。私は見て分かりますが、今日この会場に精神病の人はいません。だから興味がないかもしれませんが少し話します。精神科の患者さんは問題があります。入口と出口です。入口、入ってくるときに3つに分かれます。1つは妄想、暴れる、幻聴、どう見てもおかしい人は精神病院に入院しなくてはいけません。県立の精神病院に入院するのが適切。ベットの問題でうまくいっていないが、何となく努力していると思います。
 2つ目は精神病があるが、つい自殺してしまった人。精神病の持病があって、つい薬を飲みすぎてしまったという人や、腹を切って大動脈を突き破ってしまったというような人は救命救急センターの役割です。
 3つ目は日下部先生の方に行くわけですが、精神科の病気はうまく治療されているんだけどちょっと頭痛がする、腹が痛いなど。でも良く聞くと明らか精神病である。
 この3番目の人達は一般病棟に入院されては困るのに、1次、2次病院に紛れ込むわけです。これが問題なんです。精神病院では、こういう内科に問題のある人は治療できないから断る。内科では精神病があるから断る。宙に浮いてしまう。入口の問題とはここのこと。
 内科や救命救急の治療が終わり、残るは精神病だけとなったときに受け入れてくれる精神病病院は少ない。病気が落ちついているなら家に帰せばいいという。家に帰せないから頼んでいるんだと言いたくなる。この入口と出口で精神科の患者はもめているのです。
 次にホームレス。ホームレスは感染症をもっている人が多いようです。私は一昨年結核がうつりました。治りました。去年寄生虫がうつりました。今闘病中です。ホームレスの中にはかわいそうな人もいます。失業、離婚などの人もいる。医療費、消毒のこと、私立病院ではなかなかうまくいかない。こういうときこそ自治体病院、公の病院が力を発揮しなくちゃいけないと思って受け入れようとするが、ホームレスの患者はかなり多いのです。本当に大変です。看護婦さんが一人一人を除洗といって洗ってから私たちが診察する。ホームレスの治療費は全例、生活保護です。税金です。

 【司会(有路さん)】 ありがとうございました。では実際にそういう患者さんを搬送する消防の立場から中村さんにお願いいたします。

 【中村隆雄さん】

 県に対する要望としたら、一つは充実した救急医療情報の共有化の促進をお願いしたい。またホームレス・精神科系の救急の患者がかなり多くなってきたことで、我々も大変苦労しています。精神科系の救急患者はさっきも言いましたが6.1%ありまして、越谷市にも3つのそういう関係病院があります。
 ありますが、夜に救急要請があって病院に連絡しても、新患は受けてくれない。回答にも時間がかかるが、そうすると家族からも「もう結構です」とかになる。家族に納得してもらうために先生と変わってもらって直接話してもらったりもしています。それは我々から見て緊急性がないからです。緊急性のない患者が多いです。
 ホームレスの対応は冬場が多い。寒いから暖をとりたいんですね。病院に入って、あったかくして、飯を食べて逃げてしまえばいいんですから。それが続くと病院でも、民間病院はブラックリストを作るんです。病院によっては写真まで付けて。そうすると名前を言っただけで「手がいっぱいで駄目」「専門外」とか言って断られてしまう。病院も手弁当になってしまうのでなかなか大変なんでしょうが・・・。
 救急隊は、要は病院で受けてもらえばいいわけで、患者も受け入れてもらえれば丸く治まるんですが、そうじゃないからこういうことになっているんです。
個人的には、ホームレスについては公立病院で診るべきではないかと思っています。実際に我々が連絡するのは公立病院しか有りません。連絡するときも「民間では受けてくれませんから」とことわって。
 最後に救急隊員、救命士というのは、技能向上のために教育の充実ということで県の方でもやってくれていると思いますが、更なる努力をお願いしたいと思います。教育の充実が住民に高いサービスを提供することになると思っています。

 【司会(有路さん)】 最後に医師会の山崎先生から。

 【山崎 博さん】

 救急医療にはお金がかかって赤字になるということですが、私が開業する以前25年以上前ですが、その頃の救急というのは、応急処置を求めて患者が来ました。私は耳鼻科ですが、順番で当直になると、役目は入院中の患者が急変したときに対応することと、救急の患者が来れば診てあげましょうというのが救急告示病院の立場でした。
 本当に重傷の患者が来たときは受入れ病院を探して転送しましたが、大部分の患者は、耳鼻科でも外科的な縫合もできるし、外傷が来てもある程度診られる。子どもが来ても、抗生剤や解熱剤をだして、「こうやって寝かせておきなさい。明日小児科に行きなさい」と言うぐらいで患者さんも満足してくれました。
 今は患者の二一ズが違う。診てもらうからには専門医に診てもらいたい。それも、充分な医療を受けたいという二一ズに変わっています。専門となると、小児科なら小児科の先生がいなくてはいけない。患者が来て検査しなくてはいけないとなると、一人の患者を診るのにレントゲン技師もいるし、臨床検査技師もいるし、看護婦も受付も事務もいる。夜間でもしっかり診るとなるとそれなりのスタッフが要ります。
 昔は応急処置が出来ればよかったから、病院の負担も少なかったが、いまのような二一ズだと、病院も態勢を整えなくてはならない。もし、対応が悪ければすぐ医療訴訟で訴えられるとなると、余計に病院も充分な態勢を整えなくてはならない。そうすると莫大な金額がかかります。そうなると国、行政がお金を出してくれないと、充分な受け入れ態勢は出来ません。その辺を充分頭に入れておいていただきたいですね。
 橋本龍太郎首相が消費税を3%から5%に上げるときに、「1%は福祉と医療に使わせてください」と言ったのを覚えていますか? 私はこれはいい話だと聞いていましたが、5%になっても福祉と医療には全然まわってきませんね。
 それどころか2004年の4月からは医療費の値下げです。人件費はどんどん上がっているんです。そういう状況で充分な救急医療に対応する態勢を作るということになると、よほど行政がしっかりした気持ちで予算を組んで、態勢を作っていかないとしっかりした救急態勢なんかできません。
 医師会としては大学との関係もあり、医療の専門家として、医療面、技術面、医者とかの協力は医師会の仕事になると思いますし、充分いたしますので、経費の方は何とか行政が出していただきたいと思います。

5、市民がやるべきことは何か?

 【司会(有路さん)】

 ありがとうございました。病院に入院させたら、家庭医がベッドサイドにいて診察できるとは知らなくて、今回の資料ではじめて知りました。
 今後行政の協力も含めて、他の医師会でも進めていただきたい。身近で出来る医療態勢だと思いますので。では最後に、私たち市民が安心できる救急医療態勢を作るために何を成すべきか、パネリストの皆さんから率直な提案をお願いします。
 市民が果たすべきこともあると思います。前半から学んで1次2次3次、夜間、救命救急などおぼろげながら、救急医療の区別がわかってきました。
 すべてプロが携わっているのですから、ある程度プロのアドバイスを素直に受け入れることもスムースにいく大事な点ではないかと思います。
1.医療機関の果たすべきこと
2.医師会の果たすべきこと
3.行政の果たすべきこと
4.市民の果たすべきこと

について、いままでの話とダブることもあるかもしれませんが、もう少し強調したいことなどもあるかと思います。

 【中村隆雄さん】

 救急隊員の視点からということで提案します。命を救えるのは、その場にいた人の迅速な通報と、応急手当、救急隊員や救命土の早い救急措置、そして医療措置。これらの連携が不可欠と認識しています。これらの啓発を底辺的に広めていくことが第一に必要です。我々も応急手当の普及ということで、講習会をしています。初級、上級とあり、越谷市でも938名が講習を受けています。救急現場にいた人が迅速な通報と応急手当をすることが救命につながります。
 救急医療態勢という言葉がありますが、現状からすると応急手当が最優先じゃないか。市民で1次、2次という区別を知っている方はあまりいないと思います。かかる方は1次も2次も関係ない。越谷市には独協病院があって、市民はすぐに診てもらえる病院だと思っている。講習会で独協病院は3次救急だから違うと説明しています。市民に1次2次3次という違いを理解してもらうと同時に、応急手当も勉強していただいて、病院にかかるときには自分で考えて、やたらと救急車を呼ばないで欲しいと思います。

 【司会(有路さん)】 講習の回覧が自治会で回ってきますが、参加してみようかと思います。では2次救急を担当している日下部先生から。

 【日下部伸三さん】

 改善のために成すべきことですが、今日は一般の方が知らないことを話そうと思ってきました。一つは医師の卒後教育の問題があります。今先生に怒られそうですが、救急医療というのはありますが救急医学というのはないのです。大学病院で「あの先生は臨床ができる」というのは褒め言葉ではありません。緊急でやる盲腸の手術や開放骨折の手術をいくら沢山やっても、いくら上手くても、それで教授にはなれません。たぶん今先生は教授にはならないと思います。
 やはり移植や遺伝子治療など学会での花形分野に携わらなくてはならない。そういう土壌で特に経営の心配をしなくていい公的大病院で救急医療に力を入れろというのは無理があります。
 大学病院では医療をやっても評価はされないのです。医学をやらなきゃいけないのです。学会でいくつ発表をしたとか、英文の論文がいくつアクセプトされたとかいうことが評価される訳です。いくら患者を診ても評価の対象にはなりません
 保健医療をやる限り、最初に、「Cost, Access, Quality, Pick any two」と申しました様に、コスト、アクセス、質の、すべてを満たすことは難しい。それに尽きると思います。
 社会保障が進んでいるスウェーデンは、国民負担率が70%もあり、税金と社会保険料で収入の70%を持っていかれます。消費鋭も25%あります。日本の現在の北欧と変わらない高齢化社会を36.9%の国民負担率、5%の消費税で支えるのは非常に難しいと思います。
 私は社会保障費は消費税が一番公平だと思っています。消費税はみんなが払います。前述のホームレスの患者さんも仮にパチンコに行けばそこに課税される。こんな公平な税金はないと思っています。
 消費税は弱者に厳しいという意見もありますが、生活必需品だけは5%に抑えれば他のいわゆる贅沢品には20から30%かけてもいいんじゃないかと思います。贅沢をする人が一番負担するこんな公平な税制は無いと思います。例えば、基礎年金でも13,300円というのは、年収が2000万円あろうが収入のない大学生でも同じ金額です。
 消費税にすればレベルに応じて負担することになります。払いたくない人は贅沢をしなければいい訳で、社会保障の財源を確保するなら消費税がやはり一番公平じゃないかと思います。
 山崎先生から行政の支援ということが出されましたが、結局払うのは保険料で払うか税で払うか、受益者負担でかかった患者が払うか、3通りしかありません。保険方式というのは給与所得者という取りやすい所ばっかりから取ることになる訳です。
 高齢者が一番可処分所得を持っていると言われています。高齢者もお孫さんにおもちゃを買ってやるときに消費税なら納税するわけですから、国民全員で医療保険システムを支えるということなら、財源は消費税が一番公平だと思います。
 コストの削減は重要ですが、患者さんにも医療費はもちろんベッドも医療材料も限りある資源であるという認識を持ってほしいですね。
 今先生も同じだと思いますが、実際の救急医療現場では1床の空床を確保するのに凄い苦労をしています。2年前に大宮市でインフルエンザが大流行して、大宮市に夜間の救急ベッドがひとつもない事態に陥りました。高齢患者のインフルエンザによる脱水や肺炎で埋まってしまい、若い患者さんのためのベッドがひとつもない状態になりました。
 救急の現場ではひとつの空床を誰のために使うかが問題になります。タブーを敢えて言えば肺炎の80歳の老人に使うか、髄膜炎の10歳の子どもの使うかが問題になる訳です。血小板製剤なども献血からしか取れないので1日に採取できる量が限られています、使う期限も限られている貴重なものです。それを自殺で重症の火傷になった患者に使うか、事故で重症の火傷を負った患者に使うかという事です。
 94年の救急学会のフォーラムセッションで、救命センターに5年いたので、自分のやった治療を振り返ってみようと入院患者のデータをまとめたのですが、70歳以上で初診時の意識レベルが3桁以上(刺激しても覚醒しない重症の意識障害)の重症脳卒中((脳梗塞、脳内出血)で社会復帰(摂食、排泄、移動のADLが自立)し得た例は一例もありませんでした。
 極端なことを言えば、小渕首相の例でも分かるとおり、小渕首相も出血性脳梗塞を合併して人工呼吸器がついてレベルが3桁になった段階で彼の社会復帰はないと医者はわかる訳です。人工呼吸器を装着してからの40日間は酷な言い方かもしれませんが、医療費の無駄と言えば無駄かもしれません。
 病院で死にたいと思っている日本人は居ないと思います。皆、自宅で家族に見守られて静かに息を引き取りたいと思っているでしょう。しかし現実にはそういう死に方は今の日本人は出来なくなっているのです。なんでも病院に連れてきて、集中治療を施す。これはかなりの医療費の無駄を生じていると思います。
 医者の側がやるべき事は、各傷病に対する現時点での治療法とその成績をこのぐらいだというデータを出す。役人のやるべき事はそれを何処まで保険で担保するかを決める。高齢者の重症脳卒中の様な極端に治療効果が期待できない部分は患者の自己負担にするという形にしていかないと、医療保険制度は支えられないと思います。

 【司会(有路さん)】 ありがとうございました。深く考えさせられました。消費税に関するグローバルな見方も考えさせられました。では次に今先生。

 【今 明秀さん】

 救命救急センターは若い患者さん、一家の大黒柱、社会に貢献するような患者さんに全力を尽くしています。そのためには医療費を考えずにやっています。意識障害が強い若いお父さんなどにも全力を尽くしています。しかし、日下部先生がおっしゃったようにお年寄りになると、なかなか治療はうまく行かない。そういう時は若い人のときのようにはお金は使わない。
 医療機関の果たすべきことですが、救命救急センターの立場から見ると2次病院、例えば盲腸の手術をしたり、肺炎の治療をしたり、インフルエンザの治療をしたりする病院。2次病院でも日下部先生の所のようにすごく活発にやってるところとそうじゃないところがある。そうじゃないところに間違って行ったら不幸です。だから2次病院をもっと充実しなくちゃいけません。
 1次の医療機関、軽症つまり歩いていけるところはかなり頑張ってやっています。2次病院をもっと充実していい病院をもっと増やさなくてはいけない。そのために国からの補助金をもう少し増やしてほしい。
 3次病院は県内に6つあるが、救命救急専門医の数が少なすぎます。私どもの病院は手術も受け入れもかなりやっています。日下部先生がさっき言った救急医学についても結構頑張っている。学会でも数回表彰されています。
 医師会の果たすべきこと。救急医の質を上げることです。当直医の質を上げなくちゃいけない。そのために医師会主導で救急医療の講習会をやる。救急にあまり触れないような医者も救急が得意になってもらいたい。どんどん講習会をやりましょう。年間、大宮では私たちが講習会をやるのは2回です。地方巡業と称して福井とか九州、広島、神奈川に毎年1回づつ講習会に行っています。大宮でももっと増やして質を上げてほしい。
行政の果たすべきこと。まさかのときのためにお金を使うのが優れた国です。まさかの時のために沢山お金を使うのが政令指定都市です。
 川口市には私どものような救急医療センターがあります。どうぞ、さいたま市、埼玉県の中央にある浦和、大宮、与野に巨大な救命救急病院を作ってください。
 市民の果たすべきこと。2つあります。まず、救急車の利用について。救急車に乗ったら救急隊の言うことを聞くこと。救急車を使わないで徒歩または自家用車で病院を利用するときは、最初に救命救急センターに来るんじゃなくて、1次、2次病院を受診する。救命救急センターになんでもかんでも来ると大変です。辛いです。軽い患者は1次、2次へ、重病の場合は私どもへ。

 【司会(有路さん)】 山崎先生お願いいたします。

 【山崎 博さん】

 大宮医師会としましては現在行っている小児医療365日24時間、老人の緊急通報システム、休日診療も充実したものにしていきたいと考えています。さいたま市となったので、これがさいたま市全体、県全体に広がっていけばいいと思っています。
 病病連携の話が出ましたが、現在ある救急告示病院をどうやったらうまく機能的に動かすことができるかということは医師会が音頭をとって、各科のチーフに集まってもらってそれぞれの連携をどうするかと、いまある資源のなかで受け入れ態勢をどう作っていくかということは、これからもどんどん進めていかなくてはと思っています。頑張っていきますので皆さんのご支援をいただきたい。
 市民の皆さんに一言。できるだけ専門医が大勢いる昼間の診察時間に受診してください。昔、在宅で日曜当番していると、5時の終了間際に電話が入り、当番医だから診て当たり前という言い方をされ、挙句は7時ごろ来る。理由はご主人が仕事から帰って車で送ってくれるまで待っていたという。
 また、時間外協力医療機関制度を大宮ではやっています。自分のところの診療が終わって夜寝るまでの時間にどこにも出掛ける予定がないから患者が来れば診てあげますよというのを医師会に届けておくと、患者からの問い合わせがあったときに医師会から紹介することになっています。それでも夜10時までとなっているのに、夜中の2時くらいに電話が来て、先生のところは協力医になっているんだから診ろということを言ってくる。自分の診療を平常どおり行って、そのうえで日曜当番や夜間の診療を行っている現状をご理解いただいて、市民の皆さんにも協力してほしいと思います。
 それから消費税の話で5%の内1%は福祉、医療にということがあったはずですから、そのように使えるように頑張ってほしいと思います。夜間、休日診療はすごくお金がかかるため、行政で財源を考えてほしいと思います。

【司会(有路さん)】

 救急医療について、その現場で実際に働いているお医者さんや救急隊のみなさんのお話を聞くのは、私たち市民にとっても大変貴重な機会でしたし、本当に勉強になりました。
 本日、お集まりになったみなさんが、これからも力を合わせて、埼玉の救急医療が本当に安心してかかれるようなものになるよう、お互いの立場で努力していきたいと思います。
 本日はどうも有り難うございました。


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